『わたしもあなたがたを遣わします』


日本ウィクリフ聖書翻訳協会 理事長 塚田献

  いつも聖書翻訳の働きを覚え、それぞれの宣教師の働きのために祈り支えてくださっている諸教会、主にある兄弟姉妹に心より感謝を申し上げます。

 日本ウィクリフ聖書翻訳協会の働きは、今年58周年を迎えます。そして前回の『聖書ほんやく』の松丸総主事からの報告を見ると、この四半世紀における聖書翻訳の働きが想像をはるかに超えた進捗状況であったことが分かります(『聖書ほんやく』277号)。この状況で働きが進んで行けば、この先の四半世紀に、すべての言語に聖書を翻訳しみことばを届けるというその尊い使命が成し遂げられることも夢ではないように思えます。

 地球上にあるすべての言語で聖書を読むことができるという世界を想像するだけで、心が躍るような気持ちになります。その日が一日も早く来ることを願い祈るものでありますが、事柄はそう簡単なことではないと言えます。日本で見れば、これまでその働きを支えてきた教会の減退の状況、特に献身者、宣教師の減少は顕著で、そのことを私たちは憂いながら、事態を打開できるような手立てを見出せずにいます。また昨今の世界に目を向ければ、民族や国々の争いが激化し、宗教間においても対話より対立に向かうような現状です。これらのことで世界を行き来することが難しくなるかもしれません。福音宣教の妨げとなる要因は、私たちの周りに絶えずあります。

 そのような中で、私たちは改めて主イエスのことばに耳を傾けます。復活の主は弟子たちにご自身が死からよみがえられたことを示す中で「父がわたしを遣わされたように、わたしもあなたがたを遣わします。」(ヨハネ20:21 聖書 新改訳2017)と言われ、彼らに息を吹きかけられました。この主イエスの派遣こそ、今の私たちが福音を見聞きすることができる根源となるものです。これはペンテコステの出来事において、より明瞭なヴィジョンとして示されます。聖霊が降った時、そこにいた人たちが皆、各々のことばで福音を、聖霊を受けた人たちから聞いたというのです。これは神ご自身の計画された世界宣教のヴィジョンが、この時エルサレムの一つの場所で体現されたということです。これが主イエスの派遣でした。私たち一人ひとりは、この主にあって新しく生まれ、聖霊を受けた者としてこの世に遣わされています。この救われた者のアイデンティティーの原点を誰もが取り戻す必要があります。ウィクリフの働きが続けられていく中で、新たな宣教師が起こされていることに、主のあわれみと恵みのみわざを覚えます。

 昨年に一人が遣わされ、今年もさらに一人が遣わされようと準備を進めています。また一度引退され再び聖書翻訳宣教の働き(聖書活用)に献身された証しに心打たれました。私たちは働きによって「遣わされる側」と「遣わす側」とに分かれますが、そのすべての人が主イエスによってこの世に遣わされた者です。主からの派遣の召しにともに応えてまいりましょう。 

(高田聖書教会牧師。2025年6月23日の日本ウィクリフ総会で新理事長に就任)

『聖書ほんやく』No.278 2026年4月1日発行 掲載記事