アルネ語フェスティバル ”Festival Bahasa Alune”

アルネ語フェスティバルのポスター

田口勇新・孝子

 2024年11月13日(水)、マルク州セラム島のピルーで「アルネ語フェスティバル」が開催されました。この日は朝10時から夜の9時まで、正に丸一日のイベントでした。これは、西セラム島にある、マルクプロテスタント教会の3つの地区に属する24教会が合同で計画しました。フェスティバルの内容は、すべての年齢のアルネの人たちが、アルネ語を使った6部門でコンテストをするものでした。その内容は、小学校低学年の「主の祈りの暗唱」、「使徒信条の暗唱」、中高生の「聖書朗読」、青年たちによる「5分間の短編ドラマ」、そして大人の「オリジナル・ディボーションガイド」と、教会役員による「ショートメッセージ」でした。当初、抱いていた夢は大きいもので予算もものすごいものでした。それを自分たちで献金の声掛けをして準備を始めました。20以上の各教会がこれらすべてに参加することはあまりにも大変だと分かり、地区によってはいくつかの教会でグループを作り、参加しました。時代が変わったと感じたのは、最後の「ショートメッセージ」のコンテスト以外は事前にビデオ撮りをして、各教会が動画を実行委員会に送っていたことです。アルネ語聖書翻訳チームのリーダーのイモさんは、これら動画の審査員になっていました。審査員は、事前にオンラインで視聴して順位を決めました。フェスティバルは1日でしたが、実際は数ヵ月、このイベントのために各教会は沸きました。自分の教会で一番よくできる参加者を決めて、録画し、でき次第審査員に動画を送ったのです。

 さて、当日は、教団の西セラム地区長が開会宣言をしましたが、役員や牧師たちのみならず、教団の「福音と愛の奉仕(Gospel and Love Service)」担当者、文部省西セラムの文化担当責任者の方も列席されました。もちろん、アルネチームの4人の母語翻訳者、イモさん、チェナさん、ジョンさん、エマンさんも全面協力で参加しました。すでに決まっている5部門の受賞者たちと、「ショートメッセージ」のコンテストに参加する人たちで、約100名でした。夜の9時まででしたので、昼と夜の食事を出す奉仕をした婦人たちもいました。第6部門の「ショートメッセージ」のコンテストを終えると、授賞式が行われ、すべての部門の1位から3位までの方々にトロフィーが送られました。

各部門の受賞者たちと

 その後、イモさんは、聖書翻訳について語る時間を1時間半ほど与えられました。私たちがアルネ語の聖書翻訳を始めた時からの長い歴史に加えて、現在の聖書翻訳の進捗状況も語りました。新約聖書は2012年に献書式を終え、現在旧約聖書の78%まで進んでいること、このすべてがアルネ語デジタル聖書に入れられており、スマホで読めること、毎週教団から出される「日々のみことば」も、アルネ語で発信されていることなどを語りました。さらに、インドネシア語の聖書との違い、例えば、小見出しの分け方が違う理由も説明しました。参加者の方々からよく理解できたとの感謝のことばをもらったと、イモさんが言っていました。あれは、アルネ語の聖書が受け入れられるために、とても必要な時間だったと感じたそうです。

 このフェスティバルの一角では、「さあ、アルネ語で詩篇を読もう!」という大きな横断幕が張られ、テーブルの上に出版されたばかりの詩篇の本が並べられ、販売されました。スマホを持っていない人が読んで、神さまを讃えるため、また詩篇のことばから直接讃美歌を作ろうとする方々のために役立てるためです。より多くの人が聖書翻訳の大切さを理解し、この働きを支えようという機運となりました。

詩篇のブース

 2025年1月になって、アンボンの聖書翻訳事務所で、小さなイベント「トーク・ショー」がありました。この事務所では、いくつかの言語の母語翻訳者たちが聖書翻訳の働きをしていますが、この日、ある言語の聖書翻訳のために新しい母語翻訳者が加えられました。司会者がチェナさんに質問しました。「これまで長年にわたって、多くの困難を乗り越えながら聖書翻訳の仕事をしてきたけど、どうしてまだやってるんですか。」と。チェナさんは答えたそうです。「もちろんアルネ語の聖書全巻を完成させて、私の部族が神さまのことばを持っているところを見たいんだ。だけど、聖書全巻の翻訳を終えることだけが目的じゃない。私は人々の人生が神さまのみことばで変わるのを見たい。」アーメン。これこそが本当の聖書翻訳の目的で、チェナさんがそう思って共に働いていることに感謝しました。

(協力メンバー、盛岡月が丘キリスト教会牧師)

『聖書ほんやく』No.275 2025年4月1日発行掲載記事