ドキュメント

世界のクリスチャンへのチャレンジ、ジョン・ウォーターズ(国際ウィクリフ総主事)

聖書翻訳の過去と現状

聖書翻訳は宣教命令を果たしていく中で、いつでも宣教の兄弟のようでした。 それは人々が理解できる母語で聖書を読むことなしに、真の意味において伝道、弟子訓練、教会形成がなされないからです。 ガンビア出身のイエール大学で教える歴史学者のラミン・サネー教授は次のように述べています。 「翻訳は、本来の福音の概念と深く結びついています。 どの言語をもえこひいきされない神は、私たちすべてが自分の母語で福音を聞くことを良しとされました。」

聖書翻訳は、1800年間ゆっくりと進展してきました。 ラテン語の聖書が唯一の聖書の時代が長く続きました。 ラテン語が使われなくなると、ヨーロッパ各地で翻訳が試みられました。 1382年に、ジョン・ウィクリフは英語への最初の翻訳を完成させました。 彼の動機の一つは、英国王の后はチェコ人で、自分の母語で聖書を読んでいるのに、王は母語で読めない、 という現状に対し、何とかしたいと思ったからでした。

1800年代には、聖書協会が設立され、世界宣教の働きが進展して行く中で、聖書翻訳も多くの言語でなされるようになりました。 1800年代の終わりには、522の言語で聖書が翻訳されていました。 1900年代には、さらにそのスピードがあがり、前の百年間の3倍の数の聖書翻訳がなされました。 現在、聖書が訳されている言語は、2212言語です。 また、現在聖書翻訳プロジェクトが1500以上の言語で推進されています。 そのプロジェクトの多くは現地の人々によって推進されています。 またアジア・アフリカ・中南米、太平洋州の教会が、聖書翻訳宣教のために宣教師を派遣しています。

しかし、4.4億人以上の人々は自分の母語で聖書を手にすることができません。 世界の言語6800のうち、約3100言語は、聖書の翻訳があるかプロジェクトがスタートしています。 残りの3700言語は、聖書翻訳を必要としているか、調査が必要で、まだ翻訳が必要かどうか確定していない言語です。 いつ世界のすべての人々は母語で聖書を持つようになるでしょうか。 今までのペースで行くと、後150年はかかります。速いペースで頑張っても、100年はかかります。

ビジョンの達成に向けて

主は不可能を可能とされる神ですが、私たちは主にこの面で信頼することができるでしょうか。 主を試すのではありません。また私たちがやり遂げると誓うのでもありません。 私たちは自分を差し出すことはできるのではないでしょうか。 21世紀に主が成し遂げようとされておられることにお従いしていく準備が出来ていますと、 また主が私たちを変えようとするところではどこでも変わる用意がありますと、言えるでしょうか。 少しでも早く世界の人々が母語で聖書を手にして、御言葉の光の中を歩むことができるために、私たちに何ができるでしょうか。 2025年までに聖書翻訳を必要とするすべての言語において、 少なくともプロジェクトがスタートしているためには、今何をなすべきでしょうか。

ビジョン2025は、戦略的な道具です。現在の状況や私たちの周りの現実を越えて見ることを可能にします。 現状についての難しい質問を提起し、変化へと私たちを導きます。 現在の延長線上に未来を見るのでなく、全く新しい未来を夢見ることを可能にします。 このビジョンを国際ウィクリフ聖書翻訳協会は昨年の総会で採択しましたが、すぐに幾つものことが明白となりました。 ウィクリフだけで出来る仕事ではなく、私たちの能力を超える仕事であることが明かとなりました。 また、今までも各種の協力関係の中で聖書翻訳が推進されてきましたが、 より一層の協力関係、新たな形態の協力関係が必要となることが明らかになりました。 世界中の言語共同体、教会、聖書学校・神学校、宣教団体、聖書協会、研究機関、教育機関、政府機関、NGOなどとの協力関係です。

私たちはどのように、このビジョンに関わっていくことができるでしょうか。 祈りが最大の課題です。祈りがこのビジョンの土台です。 現在、世界のすべての言語グループのために祈っている人々が世界中に起こされています。 神の御言葉が翻訳されるためにまだまだ大きな障害があります。 福音に対して敵対的な地域において話されている言語が多くあります。 戦争や紛争のために、外部の人々が行くことが出来ない地域において話されている言語もあります。 こうした言語のために、主が状況を変えて下さるように、祈っていく必要があります。

このビジョンを達成するためには、祈りの他に、人が必要です。世界中からの働き人が必要です。 様々な職種の人が必要です。リーダーが必要です。早めに退職した人々も必要です。 アジア・アフリカ・中南米・太平洋州の教会が20世紀の後半に驚異的に成長しました。 こうした地域から派遣されていく働き人達が、適切な異文化訓練を受け、聖書翻訳・識字教育の研修を受けていくためには、 教える奉仕・訓練する奉仕が必須です。現地の人が聖書翻訳を推進していくことができるように、 裏方に周り、他の人の成功を自分のこととして喜ぶことの出来る人が求められています。

またこのビジョンを達成するには、経済の必要も多くあります。 聖書翻訳プロジェクトを進めていく費用がない地域が世界には多くあります。 経済的に大変な所に、聖書翻訳がなされていない言語が集中しています。 食べるだけで精一杯と言うところが多くあります。 どのように、そのようなプロジェクトをサポートしていったらよいでしょうか。

世界中のクリスチャンが、自分のできることで参加していくのが、ビジョン2025です。 今までの宣教国であった、北米やヨーロッパの教会が、自分たちだけでは達成できないと公式に認め、 身を低くして、世界のクリスチャンに参加を呼びかけています。 200年前の欧米の宣教師が、熱心さだけで出ていったように、 現在のアジア・アフリカ・中南米・太平洋州のクリスチャンも十分な訓練なしに出ていきます。 このビジョンは、そうした地域のクリスチャンが、謙遜に助けを受け入れることを意味しています。 主から与えられたものを、主の御栄光と御国建設のために分かち合い、 自分のグループ・宣教団体・教派教団のみの利益でなく、主の御業のために条件を付けずに差し出すことを意味します。