ドキュメント

フアミを死なせないで、、1983.11

10年以上にも前になる。フィリピン北部山地でへリコプター 墜落事故がおきた。翻訳宣教師ジョー・シェトラー帥が乗っ ていた。積んであったセメントの粉があたり一面にまいあが ていた。九死に一生を得たパイロットはすぐ現場を離れたが、 誰もついてきていないのに気づいて動転した。後部からもう 火がふき出ているではないか。

「爆発するぞ!まだフアミ(ジョーのこと)たちが中にい るんだ!!」 バランガオ族は火を消そうと懸命だった。残骸の中から荷物 や負傷者をひっぱり出そうとした。めちゃめちゃになった建 材や荷物の下にジョーがみえる。 「『火事だあ、フアミさん!』と叫ぶ声で私は意識をとりも どしました」と、当時をふりかえってシェトラー師が語る。 「体はさかさまで、残骸の下敷になっていました。でも片手 が鼻と口のあたりにあったので、少し息はできたのですが、 息を吸おうとしてセメントの粉末をガプッと飲みこんでしま いました。左手だけがわずかに動いていたんです。」

翻訳協力者の祈り

現場からへりで45分ほどのところにシェトラー師の奉仕地 があった。事態を聞きつけた翻訳協力者テクラが駆けつけた が、道中彼女は神に訴えた新えた。 「どうしてなんですか? どういうことなんですか? 村の 人はみんな、神のことばにかかわってるとロクなことないぞ と言ってますけど、本当でしようか。 あなたのおことばを私 たち少数部族のことばに訳してはいけないのですか。この事 故は罰なのですか‥」

走りながらも葛藤は続いた。神は本当に翻訳を望んでおられ るのだろうか。大勢の人から警告されてはいたんだけど…。 フアミは死んでしまうのか。自分たちが本当にわかるただ一 つの言語で神を知る道は永遠に閉ざされてしまったのだろう か。

彼女は祈った。 「おまかせします、神様。ゆだねます。あなたのおことばを 訳そうとしていたのがまちがっていたのでしたら、触れてな らないものに触れていたのでしたら、罰をお受けします。で も神さま、私たちにまちがいがなく、あなたのおことばが翻 訳されるのをお望みでしたら、フアミを死なせないでくださ い。あなたのおことばをバランガオ語に訳すのを良しとおぼ しめしでしたら、私が『フアミ!』と呼んだら、フアミに気 づかせて、『テクラ!』と返事させてください。」

シェトラー師はあぶなかった。肋骨が何本か折れていたし、 鎖骨も祈れていた。片方の肺もだめになっていた。バラソガ オの人たちは、シェトラー帥の頭にできたひどい傷をみて声 がでなかった。だがシェトラー師が一番恐れたのは目だった。 セメントの石灰で目が焼けるようだった。火ぶくれのように なって何も見えなかった。

「神さま、目をなんとかしてください。目が不自由ではどう にもなりません。まだ翻訳がすんでないのですから。」 テクラがそばに走り寄ってきて、叫んだ。 「フア!!」 「テクラ、テクラ‥。きてくれたのね。 テクラは胸をなでおろした。これでフアミは助かるし、神の ことばも翻訳されると信じた。

「その晩はとても長く、ひどい痛みで苦しみました。村の人 は私の目を洗って、傷の手当てをしてくれました。でも本当 に嬉しかったのは、みんなが心から真剣に祈ってくれた ことです。『神さま、フアミを死なせないでください。聖書 はまだ終っていません』みんな聖書を求めていたんですね」

天国への地図

そしてシェトラ一帥が村にはいって20年後、事故から10年た った昨年、ロビン・テレイ師の協力もあって、新約聖書のバ ラソガオ語訳が完成した。7月にみんなが待ちこがれていた 聖書の献呈式がもたれた。村の人たらの多くが読み書きを学 んでいた(特に聖書を自分のことばで読むために)ので、み んな心底から祝った。

シェトラー師とテレイ師の養父となったアマ氏が参列者ここ う訴えた。 「この本は天国への地図だ。たなの上に飾っておいちゃなら ん。おし入れにしまいこんでおかないようにしよう。いつも 手にして読もうじゃないか。」

2人が休暇で帰国する前に、読み書き教室の生徒からこんな 手紙を受けとった。 「ジョーさん、ロビンさんに手紙を書きます。神のことばを 読めるように教室を開いてくださって本当にありがとうござ いました。私たちの目が前よりもっとよく見えるようになっ たようです。お帰りになる と聞いて、とても淋しいで す。何だか気がぬけてしま いそうで‥。でもこれだ けはお伝えしておきたいん です。私も必ず自分の聖 書を買います!」

今日、バランガオ地方には 強い教会が育ち、現地の指 導者のもとに他の部族にも 福音を伝え、翻訳宣教師 奉仕に新たな道を開いてい る。